火星の風景 -Martian Landscape-

漫画や本等の雑多な感想を細々と記載して行きます。ジャンプは火、サンデーは木、チャンピオンは土、深夜に更新予定。

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『囚人狂時代』 見沢知廉



 見沢知廉、右翼団体幹部として英国大使館火炎瓶ゲリラ及びスパイ粛清事件による殺人で逮捕され懲役12年の刑により千葉刑務所に収監。獄中にて投稿した小説『天皇ごっこ』が新日本文学賞を受賞。釈放後も小説やコラムなど執筆活動を続けるが2005年9月7日、自宅マンション8階から発作的に飛び降り死亡。
 そんな作者の千葉刑務所12年間の刑務所生活を描いた体験記が『囚人狂時代』です。基本的に作者の政治的思想には無関心で単純に当時の話題の本のひとつとして読んでみましたが最初に起き上がった感情は爆笑でした。獄中生活の悲惨さや社会復帰に対する考察とかではなく心からの爆笑。純粋にノンフィクションのたちの悪さをここまで感じさせてくれる作品に出会った喜びで一杯でした。
 安部譲二花輪和一などの獄中体験記はありましたが3年などの短期囚がほとんどの府中刑務所とは違い、受刑者の8割が殺人罪で残りも連続放火や強盗など関東中の凶悪犯が集まってくる千葉刑務所が舞台です。出てくる囚人のほとんどが波乱万丈な過去や経歴を持つばかりではなく。社会的に問題になった事件の加害者も登場するまさしくオールスターキャストによる悲喜劇が展開されます。
 妻を保険金狙いで殺した殺人犯ではあるが青山学院大学卒で紳士然としたインテリの<青学>が、強姦殺人で服役中の<クマ>に算数を教えているが一向に埒があかなくなり、JOJOのナランチャに対するフーゴのようにキレまくるエピソードの異常さ。両親を金属バットで撲殺しワイドショーで「金属バット殺人事件」として話題になった青年が本当に野球好きで運動時間の際に金属バットで素振りをしているだけで並み居る凶悪犯どもがビビリ出した話など爆笑している自分の頭を疑うよな話が佃煮に出来るほど出てきます。
 もちろん刑務所内のエピソードゆえに刑務所内で冤罪を訴え続けた『狭山事件』の受刑者や『新宿西口バス放火事件』の犯人で獄死した丸山博文などペーソスにあふれるものもあるが、それらを吹き飛ばすほどに囚人たちの描写が立っています。これは作者の視点が批判とかヒューマニズムとかの見地ではなく、純粋に好奇心にあふれる世俗的な視点で獄中の生活を見てきた事からくるものだと思います。八王子医療刑務所の盆踊り大会の様子など本当に貴重なものを読ませていただきました。
 最後ですが、この作品に関して作者自体の殺人という罪に対しての言及がされてないことに不満を覚える意見もあります。この問題がこの作品のテーマにそぐわない部分がある事とその問題は作者自身でも触れられない心の闇の部分だったのかも知れません。結局作者は拘禁症による精神の病を引き釣り社会復帰することなくこの世を去りました。作者自身の償いは終わったのかどうかもまったくわかりませんが、ただ一つだけ作者のいくつかの著作の中に何度も登場し作者を支え続けてきたお母様の心の平静と幸せだけは祈りたいと思います。

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【読書】キマイラ青龍変 夢枕獏



◆自他共に認める作者の代表作であり25年間も続いてきたキマイラシリーズの最新刊が発売されました。
◆キマイラシリーズはかつてはソノラマ文庫で発刊されていましたが現在は『キマイラ』のタイトルでハードカバーに編集され発刊しなおしています。途中で脱落している方も多いとは思いますが。今回は外伝でキマイラシリーズ開始前の時期の話という事と作者のもっとも思い入れのある人物の龍王院弘とその師匠である宇名月典善のコンビの出会いからはじまっているため。シリーズをまったく読んでなくても楽しめる一冊になっております。実際のところこちらも『キマイラ胎蔵変』までしか読んでおらず脱落組みではあったのですが問題ありませんでした。
◆今回の外伝の主役の龍王院弘ですがキマイラシリーズ内の彼は不幸としか言いようがなく。シリーズ序盤でやくざの用心棒として裏の世界の人間の凄みをにじませながら颯爽と出てきたにもかかわらずキマイラ化し獣と化した大鳳にビビって逃げ出し、次の巻では準主役の九十九三蔵に破れ、その負けを引きずったまま突然現れた謎の外人のフリードリッヒボックにまったくいい所なしでぼこられてその後に失踪。まさしくヘタレ街道一直線。普通ならもう絶対に出番はないと思われた弘ですが夢枕先生は大のお気に入りで後書きでさんざん龍王院弘を取り上げ十何年も前から『キマイラ青龍変』のタイトルで龍王院弘の外伝を書くといい続けておりました。
◆その発言が実っての今回の発刊ですが、ふたを開けてみれば龍王院弘よりも師匠の宇名月典善の方がはるかにキャラ立ちしておりました。宇名月典善と言えばキマイラシリーズ初登場の際には真昼間の公園で近所の野良犬を生で食っているシーンが人をドン引きさせるほどに印象に残っておりますが、今回も人様の飼い犬を勝手に焼いて食っており相変わらずの典善っぷりを見せ付けてくれます。今回は典善と龍王院弘の出会いと暴力による龍王院弘の覚醒という主題に添ってストールが進んではおりますが、基本的に宇名月典善と馬垣勘十郎の戦いにストーリがのっとられており龍王院はどこへという感じです。しかし居酒屋での典善と勘十郎のやり取りと場所換えての移動のシーンなどは後書きにある「世界で一番格闘シーンを書いている作家」の名前が伊達ではない事を示しており。実際に殴りあうだけが格闘シーンではないことを如実にあらわしておりました。このシーンだけでも読み応えがある作品です。
◆難を言うとすると今までどおりソノラマ文庫で出して欲しかった。ハードカバーになると行間が開きすぎて夢枕先生の持ち味である。短いセンテンスを改行を重ねて行く手法が空回りし手抜きと感じられてしまうので。ソノラマ文庫が並んでいるライトノベルの棚に並べるには天野喜孝のイラストは浮きまくるので仕方がないのでしょうが。続刊はページ数を減らしてもかまわないので行間を詰めて欲しいです。
◆ちなみにキマイラ以外に龍王院弘が登場する作品は他にもあります。九十九三蔵の兄の九十九乱蔵が主人公の崑崙の王〈龍の紋章篇〉崑崙の王〈龍の咆哮篇〉になります。こちらが作者がキッチリ書きたかったと思われるヘタレから立ち上がる龍王院弘がかかれております。実際に作者はこの話を編集して『キマイラ青龍変』として出版したかった様子です。本当はこちらのほうがお薦めなんですが絶版の様子で新刊はなく。Amazonでもマーケットプレイス扱いなのでご注意ください。

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